無題

あの日から何年が経っただろうか。

あの日を境に灰と化していたこの街もすっかり花の色を取り戻しているはずだ。僕の庭の花も咲いているだろうか。

 

あまり僕は外に出るタイプではなかったし、

外で起こる出来事には興味がなかった。

僕が屋敷から出なくなった原因は遡ること20年以上も前の事だ。

毎日の様に舞踏会が開催され、きらびやかな衣装、屋敷の総称をする浮世離れした派手さを持つこの街で僕は人気者だった。自称ではなく、本当に人気者だったんだ。毎日パーティーよばれ、女性が列をなして私に挨拶に来る。囲まれて酒を飲むのは至高のひとときだった。

 

花の貿易を盛んに行っていたこの国で花形とされる職は植物の研究者や、貿易商だ。そんな僕は、有名な大学で植物学を専攻し未来が約束されていた。家族も皆、植物園を経営していたり、研究に関わっている。

安定した職をもった人と結婚し家庭を持つ事こそ女の幸せだったあの頃、自分で言うのもなんだが、仮面舞踏会やら、街の酒場ではよく声をかけられた方だった。

 

しかし、僕が家族と住んでいた暖かいあの家に誰かが火を放ったんだ。ついた火は勢いを落とす事なく家中を炎で包み広大な庭の跡形もなかった。

僕以外の家族は死んでしまった。天涯孤独の身だ。

しかも、火傷でただれた僕の顔はもう誰にも見せられない。鏡を見る事すら出来ず、僕は誰も近寄らない塔に閉じこもった。

この街に家族の命を奪った者がいることを考える程、街の人の顔を見るのが、話しかけられるのが怖くなった。「殺される…殺される…。」無意識に独り言をしてしまう。

 

僕は塔から出ることはなかったし、これからもないだろう。倒壊した家から出てきた数少ない種を塔の下の小さな庭に植えて、育てているだけで良かった。花と触れ合う時間だけが僕を生きている心地にさせてくれた。

 

ある日その小さな事件は起きた。

僕が育てていた真っ赤なバラが1つ、なくなっていたのだ。こんな森の奥に人なんで入って来ないはずだ。「昨日は風が強かったからな」そう思い、この日はなにも気にせず寝てしまった。

 

しかし、次の日もまた次の日も花はなくなっていた

 

僕は荒れ狂う様に怒った。

「どうしてなんだ。どうしてそんな恨まれなきゃならないんだ…!僕は…!!僕は、、」

 

バリン…(効果音)

 

布の被せてあった鏡にぶつかって鏡を割ってしまった。散らばった破片は僕の顔を写していく。

 

「やめるんだ…お願いだからやめてくれよ…。この顔になってから僕は生きた心地がしないんだ…

あぁ…あぁ。あああああああ…!!!」

 

僕は散らばった破片の中で意識を失った。

 

太陽の光が窓に差し込む。

「うぅ…なんだ…頭がひどく痛い」

窓を閉めようと立ち上がり、塔の下を覗き込んだ。

「誰だ…?」隅に咲くバラをしゃがみながら懸命に取ろうとする少女がいたのだ。

僕は追いかける事をせず彼女の行動に見入ってしまった。少女はバラを2輪取って街の方へと走って行った。ふと我に帰った僕は仮面をつけ、フードを被り少女の後を追った。

 

「花はいりませんか。」

そう言って少女は人の庭から盗んだ花で一日を生きていた。すぐに買い手が見つかったらしい。

「お嬢ちゃん、この花はどこの花なんだい?」

御老人が彼女に声をかけると、少女はとっさに嘘をついた

「私が育てているの!そうよ!私が育てて売ってるの」

「そうかい。そうかい。ありがとうね教えてくれて」

 

そう言って御老人は市場へと入っていった。

 

僕はなにも出来ず立ちすくんだ。

彼女を責めることもできない、ましてや自分の育てた花が褒められたのが嬉しかったのだ。

 

僕は次の日もまたその次の日も彼女の盗みを見守った。切った花にリボンを巻いた事もあった。

しかし、少女は日に日に痩せ細っていった。

僕はそんな彼女を見ながらなにをできない自分を責めた。

 

そんな中、僕は彼女のある花が少しでも売れる様に新しい花を造る研究を始めていた。無意識の事だった。

家に残ったわずかな資料を元に、新種の花を作り上げた。

知らぬ間に時はながれ、冬が過ぎ花が満開に咲き誇る春がやってきた。

 

僕は彼女に会う事を決意した。

彼女の為に何かしたいと思うこの気持ちはなにが原因か分からなかった。

ただただ会いたかった。

 

彼女は一向に僕の庭に姿を見せる事は無かった。

 

僕の足は街の方へ無意識に向かっていた。

冬に凍え死んでしまったのでは、そう考えた。

 

人気の無いところで噂話を耳にした。

「あの花売りの女の子、謀反で死刑になったらしいわ」

僕は耳を疑った。

「…死刑だたって…?」

「…!あなた…どちら様?!」

「なんであの子が死刑なんだ。僕を死刑にすべきだ。彼女の売っていた花は僕の花なんだ…!」

 

あの火を放たれた記憶と、彼女の死で全てを理解した。

 

「どうして…どうして新しい花を研究をしただけで国は僕の家族を殺したんだ…!!」

涙を堪えて一目散に塔に走った。

 

塔の前には沢山の兵士と偉そうにたたずむ女がいた

「なんなんだ!僕の静かな日常を壊さないでくれ」

「あなたとあなたの家族は、国の利益を自分のものにしようとしましたね」

「そんな事はしていない!!どうしてなんだ…」

僕はうなだれた。何を言ってもダメな気がしたんだ

 

「はやくその花を渡しなさい。そうすれば、この少女を解放しよう」

 

「何を言ってるんだ…。僕は、僕は…」

僕は悟った。

人の命を人質に取られたならば何もできない事を。

そして、自分自身が少女の事を心の底から気にかけ、そばにいたいと思ってしまっている事を。

 

そこからの記憶は断片的で、凍てついた鉄が時間の感覚を麻痺させる。

 

彼女は生きているのだろか。今はもう分からない

 

断罪の鐘が僕の為に鳴る。

 

 

 

 

【Desert rose】専用台本

セリフの割り振りはみなさんの推し名です。

🍶💄💋♻️🐺

 

()の所は心の声なのでBGMをストップさせて言ってくれるとそれっぽさ出ると思います。

 

let's start!

===================

 

カランカラン(ドアの開く音)

 

♻️あら、いらっしゃい!また3人で来たのね。どうしてホワイトデーなのに誰一人として男と過ごす予定がある女がいないわけ?

 

🍶デザートローズに来るのが私達のホワイトデーの予定なわけ。わかる?

 

♻️はいはい。わかったわ。言い訳なんて聞く気になれないから、早く飲みたいの頼みなさいよ

 

💄私ー、ビール!

 

💋うちはー。ワインかな…

 

🍶私、禁酒してるから、ジュースでいい!

 

♻️わかったわ。だけど、山茶花、お酒飲まないなんて、あんた健康診断にでも引っかかっちゃったの?

 

🍶いやー。それがねー、、♡

 

💋なに?!あんた、もしかして…!

 

💄恋…?!そんなの認めないからね?!

 

🍶会社で部署の違う人と飲む機会があって、

私、本当はあんなに飲むつもりじゃなかったの!でも、色々ミスしてストレス溜まってたからストッパー外して飲んじゃったわけ。

 

♻️それで。?早く教えなさいよ。

 

💄どうしてマルちゃんが聞きたがってるわけー?笑笑

 

💋山茶花、サッサと話して、気になる!

 

🍶えー?それで、話した事もない違う部署の男の子にすっごい酔ってだる絡みしちゃったの、

 

♻️相変わらずじゃない。あなた。

 

🍶ここからだから!そしたらー、なんか、私の事心配してくれて!叱ってくれたの!!すっごいいい子だと思わなーい?

 

💋まぁ、うちらが言っても聞かないあんたが禁酒するくらいの破壊力があるってのはね、凄いわ。

 

💄いい子だとは思うけど、それ一回で恋に落ちる理由が分からない!

 

🍶次の日会社に行ったらデスクの付箋紙に

"昨日は大丈夫でしたか?"って!!

 

💋あーー。これはもう落ちてるわ…

 

💄ぞっこんてやつだわ…

 

♻️2人はどうなのよ?恋とか、

 

カランカラン…(ドアを開くおと)

 

♻️いらっしゃい。久しぶりじゃない。

 

🐺こんばんは。お久しぶりです。

 

🍶(え!!!常連なの?知らんぷり決め込むしかないじゃん…!)

 

💋(まっ…まじで?!)

えーっと。な、なくはないけど…?

 

🍶やっぱきちうさちゃんもあるじゃん!

 

💄なんなの…これ、言わなきゃいけないやつ…

(どーしてきちゃうかな…タイミング悪)

 

♻️そんな出し渋らないで早く言いなさいよ。

 

💋実は、うち、片思い中で、その人はうちのバイト先のお客さんなんだけどね、ランチの時間によく1人でパソコン広げて仕事してるんだけど、一回、その人にコーヒーをぶちまけちゃった事があって…

 

🍶ほうほう、、ドラマ的展開。?

 

💋前髪が長くて目元が隠れてるからすっごい怖い人だと思ってたの…!でも、こぼしちゃったときめっちゃ謝ってたら、

"映画みたいですね"って笑ってくれたの。

うちめっちゃ顔が熱くてやばかった!

 

💄なにその、王子。

 

💋あれから、その人のテーブルに何か持って行くとき手が震えてさ!

 

🍶へーー。案外ドラマチックな恋してるじゃん

 

💋まーねー。(今うちらの隣に座ってる人なんだけどねー。)

 

🐺あの…

 

💋💄🍶はい!!!!

 

🐺あっ。すいません。そっちじゃなくて…

 

♻️私よね、ゲス山ちゃん。ごめんなさい、話に夢中で飲み物なに飲むか聞いてなかったわね。

 

🐺俺は、ウィスキーで。

 

♻️わかったわ。ちょっと待ってて。

 

💋で?ねーちゃんはどんな感じなのよ。

 

💄いや、私は…そんな、

 

🍶ほら、話してみなよ!

 

💄つい2日前のことなんだけど、私さ、バイト先がちょっと遠いから電車に乗るわけじゃん。

 

🍶ほーう。それって、、まさか!

 

💄すっごい電車が揺れた時に、掴むところがなくて転びかけたんだけど、助けてくれて。

ありがとうも言えなくていまだに会えてないんだけど…

すっごくかっこよく見えてしまったというか…。なんというか…

 

💋それで?頭から離れないと?

 

💄もーー!恥ずかしいからやめてよ…(その人隣に座ってるから大きな声で言わないでよ…!)

 

♻️あんた達、3人ともかわいい恋愛してるじゃない。

 

🍶久々だよねー。こんな話。毎回、

彼氏いないーー!みたいな嘆きしかないじゃん?

 

💋そうねー。うちらに春来ちゃった感じ?!

 

🐺こんばんは。山茶花先輩。来てたんですね

 

💋(は?なんで面識あるわけ?)

 

🍶あっ!ゲス山くん!あ。みんな、彼が私の話出てきたゲス山くんだよ。

 

💄(え…どうして。電車の彼がいるわけ。しかも山茶花ちゃんと面識ありとか聞いてない…!)

 

🐺…こんばんは。あっ…君…。

 

💋あ…。こんばんは!このあいだは…その。

 

🐺大丈夫だから。気にしないで。それで、3人はどういう…?

 

💄飲み友です!

 

🐺そうだったんだね。君、もしかして…。

 

💄あっ。あの時転びそうになったのを助けてくれてありがとうございました。

 

🐺ケガしてなくてよかったよ。

 

♻️ちょ、あんた達!集合!

 

🍶なーに?

 

💋なに。イケメン眺めてたの邪魔しないでよ

 

💄はい!なんでしょう、

 

♻️もしかして、あんた達…おんなじ男に恋してるなんてない?

 

🍶💋💄…。

 

🍶でも、ゲス山くんと関わりがあるのは私だし

 

💋マルちゃんに関係ない!

 

💄私は、眺めているだけで嬉しいというか…

 

♻️現実逃避しても無駄よ!!だってゲス山くん…

 

カランカラン(ドアの開く音)

 

🐺…待ってたよ。どうする?違うとこでのみ直そうよ。

 

💋…なんだよ。ショック…。

 

💄もう、いい…当分恋はしない。。

 

🍶知らない知らない!!!あんな奴なんて知らないんだから!!

 

♻️あんた達、デザートローズってどういう意味か分かってる?

 

💋そりゃ、うちらみたいな、砂漠に咲いた一輪の華(はな)的な?

 

♻️間違ってはないし、そういう風に店名を付けたのはいいけど、

あんた達の場合だと、

砂漠に咲く1人の男という花を求める的な意味になっちゃってるじゃない。

 

🍶💋💄まるちゃん!酒!

 

♻️はいはい。わかりましたよ。

 

 

〜end〜

 

 

 

episode15

「元気か?お嬢ちゃんよ。」

 

「ええ。四年も経てば、リュウさんも子供達の相手に手慣れるのね。」

 

「おう。楽しいよ」

 

今、孤児院の子供たちはリュウさんと先生が面倒を見てくれていて、私も手伝える時に手伝っているという感じだ。

 

「中華料理好きのアンリ国王は元気してるか?」

 

「元気よ。即位してからは忙しそうに仕事をしてて。少し老けたかもしれないわ」

 

アンリは民意のもと政治を行う事を誓い、国王として即位し、今では国をまとめる国王となっていた。

 

「そうかー。若いのによくやるもんだあいつ」

 

「今度会いに来てくださいよ。子供たちを私の家に招待して。ね?」

 

「そうだなー。そういや、お嬢ちゃん、あの家にまだ1人暮らしか?フィアンセなんかいねーのか?」

 

「それは、、。まだ、ですけど!早急に探します!!」

 

「はは。ジェラルドせいか?気にすることなんてないが、若くて可愛らしいうちが華だと思うぜ。」

 

「余計なお節介よ!リュウさん?」

 

「ごめんごめん」

 

お茶目で優しいリュウさんと話しているのはいつも楽しい。1人でくらしている私とっていい刺激だ。

 

「今日は夕飯食ってかえるか?」

 

「ええ。お言葉に甘えて」

 

===================

 

「さぁ、どーぞ!」

 

「ありがとうございます。いただきます」

 

あの日から4年と半年が経とうとしていて、

散り散りになったファミリーの行方は分からない。私はジェラルドがもしかしたら生きているからもしれないという勝手な憶測だけを希望にリュウさんと話しているのかもしれない。

 

「今日は上海蟹だ!!」

 

「美味しそうですね。」

 

「ああ、いいのを仕入れたからな!」

 

「そういえば最近、上の階に誰か引っ越してきました?」

 

「ああ。狭い部屋なんだがな、」

 

「そうなんですね。____「あ。ちょうど降りてきたぞ」

 

私達の前をうつむきながら通り過ぎようとする

 

「おまえさ、そろそろ会えよ。」

 

「会う気なんてないさ。」

 

記憶の奥底で眠っていた声が私を呼び起こした

 

リュウさん、かして!ハサミ!!」

___「え?」

 

バサっ

 

「お…おまえ。」

 

「ジェ…ジェラルド…。」

 

私は咄嗟にリュウさんの手元にあったハサミを手にとって男の髪を切ってしまっていた。

 

「バカ…!!死んだと思ってた…」

 

「うるせーよ。ワンワン泣くな、」

 

そう言って彼は私の頭を撫でた。

 

「ごめんな。

最後まで悪者でいたかったんだよ」

 

「もう、!本当に…!!謝りたい事も感謝したい事も沢山あったのに!死なれたから困ってたのよ!!!」

 

 

「ははは。ごめんって。

ありがとうな。いろいろ。ずっと見てたんだよ。上のベランダから。」

 

「さっさと出てきて孤児院手伝いなさいよね」

 

「ああ…わかったよ。」

 

「ジェラルド…おまえ、、前髪が、」

 

「あ!!!おまえ!」

 

「ぷ…ふふふ。変…!!!」

 

また、笑い合う日がこれるなんて

思ってもなかった。

 

episode14

「この国の景色はかなり変わったわね」

 

「僕達の遊んだ庭や街は工場になってしまったな」

 

1年以上足を踏み入れられなかった私達の国は花の都と言うよりは少し灰がかかったような薄暗い景色が広がっていた。

 

「着きました。モニカ様」

 

「ええ。」

 

「どうぞ」

 

ガチャ…

 

「…!!全部、一緒…_______「ジェラルドが

用意してくれていた家らしいよ。」

 

「相手方のマフィアからの報酬として家を用意させたらしく、この家をモニカ様の為に…」

 

「…彼が、あの時クラブで話していたのは、私の家のことだったってことなのね。」

 

「そうかと。」

 

「分かったわ。ありがとう。貴方とアンリは家へ帰って。少し、一人にしてくれないかしら」

 

「かしこまりました。では、失礼します」

 

彼らが去った後、複雑な気持ちに私は襲われた

こんな家に住んでいいのかという気持ちと、ジェラルドへの感謝しきれない思いが交錯する。

 

家は時を止めたかのように以前のまま復元されていた。家の中を歩けば歩くほど、辛い記憶より楽しかったあの頃が蘇る。傷が癒えた証拠と言えるだろう。

 

私はこの家に住みながら、孤児院の子供たちのために、孤児院を残してくれたジェラルドの為に月に一度あの街に足を運ぶようになった。

 

 

episode13

「…ん。先生。?先生ーーー?」

 

部屋を見渡しても人が居る気配がない。

 

「先生?____「モニカ。大丈夫?」

 

「アンリ…先生は?ジェラルドやヴィヴィも」

 

「先生なら________「モニカ。その…」

 

「先生!!ジェラルドは!?大丈夫なの?」

 

「撃たれた所が…悪かったんだ。」

 

「うそ!そんなこと嘘よ!!」

 

「僕もベストは尽くした。それしか君に伝えることは出来ない…!」

 

あの時と同じ気持ちになった。

死んだと言う一言を一度も出されなかったが彼がもう空を仰ぎながらタバコを吸う姿は見れないのだ。

 

===================

 

「モニカ。」

 

「どうしたのアンリ。」

 

みんなが消えた日から1カ月が過ぎようとしていた。先生と私はジェラルドの墓を建て、私は孤児院の子供達の世話しながらアンリとあの日と変わらずこの家に住んでいた

 

「モニカ、ヴィヴィから連絡が来た」

 

「…え?」

 

「分からない。でも、王宮に戻ってきてほしいって。もう準備は出来てるって言ってるんだ」

 

「行方不明になってたのに突然…?ヴィヴィはあなたが王になる支度でもしてたと言うの?」

 

「そうみたいだ。君にも伝言だけど、君の家もあって君も戻ってきてほしいそうだよ。当主として。」

 

「アンリ…あなた、もしかして王様になるの?

私も母国に帰れる。そう言ってる?」

 

「ああ。そう伝えられた。」

 

「私は…。

国には戻らない。孤児院の子達が心配だもの。

リュウさんに丸投げするのはまずいわ」

 

「そうか。僕は戻ってきてほしいのだけど。

明日迎えが来るらしいからその時に気が変わったら僕と一緒に…」

 

「ええ。わかったわ。きっと私の答えは変わる事はないだろうけど」

 

次の日、本当に迎えが来た。

 

「アンリ様、長い間連絡もせずお待たせしてしまって申し訳ございません。」

 

「ヴィヴィ。帰ろう家に。」

 

「モニカ様は…お帰りにはならないのですか」

 

「ええ。帰る気はないわ。」

 

「しかし…一度帰っていただくことは出来ませんか。お知らせしたいこともございますし」

 

「そうなの?ここでは知らせる事は出来ない?」

 

「はい。申し訳ございませんが帰っていただいてからでないと…」

 

「そうね。なら、帰ってみましょう」

 

私達3人は母国に帰る事になった。

革命から2年近くが経っていた。

 

episode12

あの日から数日が過ぎ、警察のガサ入れが至る所で行われた。ジェラルドは姿を消し、ファミリーは散り散りになった。

 

コンコン…

 

「警察だ。開けろ」

 

「アンリ!______「モニカ様、落ち着いて。

私が対応します」

 

「いるんだろ?出てこい」

 

「はい。ご用件は何でしょう。」

 

「ジェラルド ゲイナーという男を探している。

知っていることを全て言うんだ」

 

「私達はこの崖の家から下へは行きません。

なので、あなた方の言っている人の事はよくわかりませんが…」

 

「じゃあ、おまえが王族の側近で生き残っている事を国民が知ったらどう思うんだろうな。

ヴィヴィアンパラディール」

 

「どうしてそれを…!」

 

「よう。警察の皆々様。そして、アンリとモニカ、ヴィヴィも。お久しぶり。」

 

「おい!ジェラルド ゲイナーがこの家から出てきたぞ」

 

集まってきた警察にどよめきが広がる

 

「警察の皆様、チャイニーズマフィアへの孝行お疲れ様でした。」

 

「何を言っているの…!ジェラルド!」

 

「黙っててくれないかモニカ。

また口、塞ぐぞ…って事で、ははっ。

お話と行こう。

この街の警察。いや、この国の警察は隣国をクソにしたマフィアどもに魂売ったんだろ?

今俺に突きつけてる銃、中国製だし、分かり易すぎるんだよ。ジャンの話ではここ2、3年長官が色々制度を変えてるらしいな。」

 

「おまえその口を閉めないと、うつぞ!」

 

「いいや!黙らないね。まさか国全部の警察を買い占めるとは…。」

 

「おまえら!銃かまえろ!」

 

「いいのか?俺の声が全世界に発信されているのも知らないまま俺を殺しても。」

 

「あっ…!」

 

そう言ってジェラルドはアンリの髪を引っ張り頭に銃を突きつけた。

 

「アンリ…!!!___「アンリ様!!」

 

「結局は、おまえのクソ両親が色々仕込むからいけないんだ。」

 

 

空気が一気に緊迫した。

 

「ヴィヴィ!やめて!」

 

「ジェラルド!!!!!アンリ様には触れさせません!」

 

完全にヴィヴィの銃口はジェラルドの方を向いている。

 

「触れられたくなければ、僕を撃ち殺せばいい

さぁ。分かるだろ?」

 

「だめよ、ヴィヴィ!!

ヴィヴィが人殺しになってしまう。!」

 

「はやく、撃てよ______

 

大きな銃声が一発だけ部屋に響いた。

 

 

大量の血が床を染める

警察は事実を隠蔽するためなのか、

銃を下ろし足早に帰っていった。

 

「ジェラルド…!血が。」

 

「ああ。まあ、想定内かな…」

 

「私…なんて事を…」

 

「ヴィヴィ!

そんなこと言ってら暇なんてないわ!

先生を呼んで!!」

 

「ジェラルド、意識を保って…!先生が来るまで、もう少しだからね。ね?」

 

 

何分が経っただろう。きっとそんなに経っていないはずだ。しかし、そんな1分が今はとても長く感じる…

 

 

「モニカ…!」

 

「先生…!!____「モニカは下がってて」

 

「アンリと一緒に居るんだ」

 

「わかった。」

 

あれから何時間が経っただろう。

夢と言う楽しい記憶の中に私は体を沈めた。

 

 

 

 

 

episode11

「アンリ。ここは?」

 

私達3人は丘から少しまた登った所にある崖の上にある古びた古民家に来ていた。

 

「んー?ここは______「王家が代々引き継いでる亡命のための一時的なシェルターのようなものです。」

 

「そう。ヴィヴィはなんでも知っていたのね」

 

「…。生活に困らない程度の設備は古いながらに揃っております。騒動が収まるまでこちらに身を潜める事が可能でしょう」

 

「…ジェラルド」

 

ジェラルドがこれからどうやってこの状況を切り抜ける中が私の心にもやをかけた

 

===================

 

崖の上にある古民家からは小さくジェラルドのいる孤児院が見えるのだが、一向に動きはない

街はパトカーのサイレンと刑事らの怒号で騒がしさを極めた。

 

「おい!ヴィヴィ!!」

 

「誰だ。この声は…リュウリョウか…」

 

リュウリョウ様。」

 

玄関のドアを開けると先生が息を切らしながら立っていた。

 

「あいつ…!はぁ。ジェラルド!___「ジェラルドがなんて?」

 

「あいつ、やばい気がする。」

 

「なっ。何があったのですか。」

 

「俺とベルトに…!

孤児院の子供押し付けやがった」

 

「え!?彼はどこに…」

 

「わかんねー。他のやつからも色々連絡がきてよ。金やら武器やら偽造パスポートなんかまで

自分以外の全員の分用意して消えやがった」

 

「探しましょう…!」

 

「でもよ、モニカ、俺たちは動けねー。八方塞がりなんだ。今もし俺が下手に動いちゃ全員皆殺しちまう」

 

彼の行動はいつも突発的でわたしにはこれから何が起こるのか分からなかった。

 

「とりあえず、おまえらもあいつ見つけたら言っといてくれ、俺は子供の育て方なんて知らねーってよ」

 

「なるべく早く見つけるようにするわ」

 

その夜、私は再びあのクラブを訪れた。

 

_______________________

 

響く重低音は変わらず私の体を揺らした。

 

「いた。」

 

奥の部屋に向かっていくジェラルドを見つけた私は距離を取って動向を見守った。

 

「…ああ。偽装パスポートと家だ。

家が欲しい」

 

音に紛れながらジェラルドの声が聞こえる。

 

「ああ。分かってるさ。おまえらに全て任せる。王族は始末するさ。

俺が罪を被ったんだから、家くらいは報酬として貰わねーとな」

 

__________どうして。裏切ったの…

 

「…どうして。!!____「おまえ…!」

 

「誰だ」

 

「こいつは…!ああ。おれの…女だ」

 

「はぁ…何やってんだ?外で待っててくれって言っただろ?あとでかまってやるから、な?」

 

そう言って彼は私にキスをした。

 

「…!」

 

「はいはい。この金で遊んどきな、いい子にしてるんだぞ?…話はあとだ。」

 

「…もう!わかったわよ」

 

数分して、彼は私を店の外に連れ出した。

 

「おまえ。何やってんだ。バカ」

 

「あんたこそ何やってくれてるのよ。」

 

「うるせー。ガキは引っ込んどけよ。あああ!

おまえが来るから、話進まないし、首は突っ込むは、人の邪魔はするは散々だよ」

 

「…ごめん。」

 

「…いいって。とりあえずおまえも知ってるだろうけど、ファミリーにはこれから生きていけるくらいの金は用意したし、組織自体も警察にバレないように実質解散だ。だから、これでおまえと俺も関係なんてない。俺は隣の国で悠々自適に生活できる事が確約された。分かるか?おまえや王族がこれから死のうと消えようと俺には関係ない。」

 

いつもの落ち着いた話し方とは打って変わり

今日のジェラルドはいきり立っていた。

 

「さっきのはチャイニーズマフィアよね?!

あんなに…あんなに信頼してたのに」

 

「おまえが信じようと信じまいと俺は俺のしたい事をする。おまえがどう思っていようとも俺は悪人だ。」

 

失望した。こんな怖いジェラルドなんて見たくなかった。