episode 7
何もわからずヴィヴィの運転する車に乗り込んだ。
「その…______「お迎えが遅れてしまい申し訳ありませんでした」
「大丈夫だけど、、どうして_____「その話は後で詳しくお話しさせていただきますので、これから、このお店で頼んだ物を取りに行きます」
渡されたメモ用紙には住所が書かれていた
「チャイナタウンの方の住所ね。
中華料理店…?」
「そうです。彼の料理をアンリおぼっちゃまは気に入ってくれたようで、今日もあなたと食べる夕食をそちらで選んだらしく、、」
この話をしてから、私達の間に会話は生まれなかった。流れる景色が徐々にアジアの街並みに変わっていく。着く頃には細かい雨が降り出していた
「着きました。通りが狭いのでモニカ様が取りに行ってもらっても…?」
「ええ。いいわ。」
小走りで店へと足を進める。
蛍光灯の明かりがやけに明るく感じる程、その店の近辺は暗かった。
「こんばんは…」
「やぁ。元気にしてたかい?モニカ。」
「どうして名前を」
「随分前に来てくれただろう?先生と。」
「あっ。すいません。覚えていなくて」
「いいやー。夜だと雰囲気も変わるから仕方ないよ。_____「あの。頼んでいた…」
「あー。重たいけど、車まで持って行こうか?」
「すいません。_____「でも、土砂降りだ。」
「そうですね。でも私1人で大丈夫です」
店主は外を見て突然声色を変えた。
「ちょっと。店の中で話しておこう。外は真っ暗だし、地面も滑りやすい。お茶、出すから
座って」
「え。ええ。ありがとう」
店主はお茶を取りに厨房へと戻って行った。
______どうして店に引きとめるのだろう…
遠くから店主が電話で話している声が聞こえる。
____________もしかして 私をはめる気…?
「ごめんよ!待たせちゃって」
「っは…い。いいえ。大丈夫」
「その、今日は君は帰れない」
「なぜ…!もしかしてあなたは私をはめようと…!」
咄嗟に出入り口のほうに私は後ずさった
「そういう事じゃないんだ。信じてくれ。
もう店を閉めないといけなくてね。なるべく早く」
彼は素早くシャッターを閉め始めた。
「はやく!理由を話して!初めて話した人なんて信じれない!」
全てのシャッターを閉め終わると彼は私にお茶を注いで話し始めた。
「雨は合図なんだ。」
「合図…」
「君は僕達のファミリーを知っているよね?
ジェラルドや、警官のジャンとか」
「ええ。」
「もちろん、俺たち以外にもマフィアってのははあってだな、
多くを俺らが牛耳っているんだが、
この地域だけはチャイニーズマフィアが支配してるんだ。違法薬物の売買で稼いでるんだが…雨が降る日は薬の販売日らしくてな
キマった奴らが薬を求めて出歩くんだよ」
「それで…私を。」
「そーさ。マトモなおまえさんが気軽に出歩いて生きて帰ってこれるようなもんじゃねー、しかも、近頃ここら辺では、変な薬が流行り出してるんだ」
「どんな…」
「人をゾンビにしちまう薬だよ、アイツらが流してるらしい。気が狂ったように凶暴化して、使い続けると、徐々に体がゾンビみてーに腐ってくんだとよ。」
店主によるとチャイニーズマフィアによるデザイナーズドラックが横行して特に雨の日の夜は出歩けない状態だという。
「だから申し訳ねーがモニカお嬢ちゃんよ、
夜が明けるまではここに居てくれないか?」
「…わかった。」
バンっ!バンっ!
「なに!!?」
「あぁ、心配するな。外で変なやつがシャッターを叩いてるだけだ。この前は銃弾が貫通したよ」
「そんな危険な…」
店主は事を未然に防いでくれた、
命の恩人なのかもしれない。
大きな音の後、沈黙を破るように言った。
「あの。あなたの名前は…」
「アイ リュウリョウさ。」
「リュウさん…?____「聞き慣れないよなー。
いいよ、その呼び方で」
「すいません。東洋の名前は慣れなくて」
「それで、モニカお嬢さんは麻雀、できるかい?」
「はい。少しだけルールを知ってるくらいですが」
「これは、朝まで麻雀だな…」
楽しそうに笑う彼は私を引きとめた時からは
全く想像できない柔らかい表情をしていた。
そう言って彼は麻雀の牌を並べ始めた。
闇い街に日が昇るまではまだ時間がある。