episode8

真っ暗な街に太陽が昇り始めた頃、

シャッターの開いたガラス張りの店に自然の明かりが差し込む。

目が覚めると毛布がかけられていた。

 

_______どうしてあんなに疑ってたんだか…

 

「おはようございます。お嬢ちゃん」

 

「おはよう。リュウさん」

 

「昨日の夕飯がパーになったから、俺から2人を朝飯に招待したんだ、いいかな?」

 

「ええ。」

 

カランカラン…

 

「おはよ。モニカ、久しぶりだね」

 

「アンリ!!!会いたかった…」

 

昔のように自然と抱擁を交わす。死んだと思っていた人を再びこの腕で抱きしめる事に大きな幸せを感じた。

 

「君も生きていたんだね。良かった」

 

「本当に良かった。

早く国に帰れるといいわね…」

 

「帰れるかは分からない…。でも、この街で、不自由はしてないから心配ないよ」

 

「あのー。お二人さんよ、そろそろいいかな?」

 

「ごめん____「ごめんなさい」

 

「それでは、席へ」

 

ヴィヴィは私たちの椅子を引いてくれた。

 

「今日は昨日頼んだ物以上に豪華だね。リュウさん?」

 

「ああそうさ!昨日、パーにしちまったからなー。おまえさんが好きなのを全部作っといてやったぜ。ほーら、食べろ食べろ」

 

テーブルに並べられた料理はわたしにはあまり馴染みのないものだったがどれも美味しかった

 

「それで、詳しく話すって言ってた話は?」

 

「私達はマ…「ヴィヴィいいよ。僕から話す」

 

「すいません。お任せします」

 

「これから話す事は君にとっては信じられないことかもしれない。でも、本当の事なんだ。

信じてくれる…?」

 

「ええ。もう嘘としか思えない事に散々振り回されてきたから。私は知れればそれでいいの」

 

「そっか。

僕達王族は昔からマフィアと友好的な関係を築いていたんだ。

主に経済面、貧困層の救済や不景気時の雇用、多岐にわたっていた。」

 

おもむろに話し始めたアンリの話は国の秘密といっても過言ではなかった。

 

「でも、ここ数年で色々変わってしまったんだ

僕に年の少し離れた兄がいるのは知っているよね?モニカ、君も遊んでもらった事あるはず」

 

「ええ。背の高くて、貴方のお父さんによく似た…」

 

「僕の兄…名前を言うのも嫌になってしまうな。兄は次期王として期待され、彼自身もその期待に応えようと必死だった。全てを1人で抱え込もうとしていたんだ。」

 

「それで、お兄さんは…」

 

「彼のその強い想いは裏目に出てしまった。

彼は両親の言う事、側近や大臣の言う事に耳を一度も傾けようとはしなかった。ちょっとした助言が彼には言い付けに聞こえたのかもしれないね。」

 

「そこで、アンリおぼっちゃまのお兄様は自らコネクションを作り始めました。しかし、全てが順調に進むものではなく、国の情勢が悪化しだした頃、そこに漬け込んだのがチャイニーズマフィアでした。」

 

ヴィヴィやアンリが淡々と話す姿は国を動かす人間として当然なのかと、きっと私ならこれほど落ち着いては話せないだろうと思った。

 

「兄は悪い輩の駒にされ、国の治安は悪化、薬と暴力が横行するようになってしまった。

そして…革命が起きた。」

 

カランカラン…

 

「おっと、お嬢ちゃん、俺はこの修羅場には居たくねーなら厨房に退散するぜ」

 

 

 

「正確には、起こしたんだけどな。

お坊ちゃん。相手に伝えるには言葉選びに気をつけなって」

 

「ジェラルド。どうしてここに」

 

「俺も朝飯だよ朝飯。べつにおまえらの話を聞きにきたわけじゃない」

 

「起こしたって…故意にって事?」

 

「ああ。そうさ。お坊ちゃんと両親、そして、そっちにいる、ヴィヴィってやつは、国の崩壊は時間の問題だと悟ったんだ。もちろん、こいつの兄貴は洗脳済みだから聞く耳も持たない。だったら引きずり下ろすのみ…。」

 

「ジェラルド…黙ってくれ」

 

「いいや。黙らない。だからこいつらは俺らに頼った________「おい!ジェラルド!」

 

「黙ってください!ジェラルド様」

 

アンリがジェラルドの胸ぐらを掴みそれをヴィヴィがとめようとする。一瞬の出来事に一気に空気が張り詰めた。アンリがあそこまで憤っているのを私は初めて見た。

 

「おっと、民主主義の王子様、物騒だなぁ。

おまえがどう隠したって、アイツは知るしかねーんだよ。」

 

「だからって。そんな言い方はないだろう?」

 

「…早く話して。

喧嘩なんかせずに早く話してよ」

 

「いや、でも、君は家族を失っているし…」

 

「そんな事なんて関係ない。家族はみんな死んだ、帰ってこない。私は何も知らないまま一年が経とうとしている、そんな状況で、貴方に気を使われて話をいいところだけ切り貼りされるのはありがた迷惑だわ。

アンリ。」

 

「分かったよ。全てを知っているのはジェラルド本人だから、聞くといい。」

 

「僕達はゆっくり朝食を楽しんでおくから、

あいつと一緒に君は行ってくれ…」

 

アンリは普段はつかないため息を深くついていた。

 

「それでは、お嬢様、僕の車へどうぞ?」

 

私たちは店を出た。