episode1

20XX年 12月25日

 

クリスマスソングが流れるリビングに

大きなクリスマスツリー、溢れる家族の笑顔

全てが完璧なはずだった。

私がチャイムのなるドアを開けなければ。

私が両親の言う事を無視してずっと側にいれば

私があの時、家族を置いて家を燃やさなければ

 

辛い思いをしないで済んだかもしれない。

 

革命も、家族を失うのも全て突然だった。

 

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「っは…。」

 

___ここは…?

 

「おはよう」

目が覚めると、見慣れない部屋が広がっていた

背の高い男が私に話しかけてくる。優しく、淡々と。

 

「ドクターナターリ…?どうしてここに」

 

「今は少し忙しいから、あとで話そう。

モニカ。部屋の外に出ているから、これに着替えて。合わせたい人がいる。」

 

「…」

私が頷く間も無く彼は部屋から出て行ってしまった。

 

着替えを終えて部屋を出る。手を引かれ大きな扉の前に立たされた。

 

コンコン…ガチャ

 

「連れてきたよ。

モニカ、さあ、はいって」

 

「あ。あの…」

 

「ようこそ!僕の孤児院へ。モニカ。よくここまで辿り着いてくれた…。死なずに」

 

「何者ですか。名乗って貰っても?」

 

壁が全て本棚になっている大きな書斎に通されると大きな椅子に足を組んで座っている男が急に立ち上がり私を歓迎した。名前も知らない彼が私の名前を前々から知っているかの様に話す様子は異様だった。恐怖さえも感じた。

 

「席、外してくれるか。お医者さんよ」

「もちろん。先の話は聞きたくもない」

 

全てを分かっているかの様な先生と彼の会話。考えを巡らす間も無く私を歓迎した男はこう言った。

 

「自己紹介よりも先に君には決めて欲しいことがあるんだ」

 

「名乗りもしない人に選択を迫られる筋合いはないです。お断りします」

 

コンッ

 

椅子に深く腰掛けている細身の男は目の前にあるテーブルに真新しい拳銃と一枚の紙を雑に並べた。

「いいや。君には選んでもらわないといけないんだ。今すぐにね。

君の親の元に帰る。言い換えると、このままここで死んで遺体となって国に帰るか、この契約書にサインしてもらうかだ」

 

 

____何を考えているの。。

 

目元の隠れた彼の表情を掴むことはできなかった。

「私は、家に帰りたいの。あの家に____

「君が火を放ったあの家に…?

 

_____どうして…。

 

「ははっ。戻れるわけがないだろう?君の家族はもう居ないんだこの世に。」

 

「どうしてその事を…っ」

「君の事は全て知ってる。

イチゴが好きとか

弟と遊ぶのが日課で、

成績は毎度優秀な事とか…。

革命軍をが来たときドアを開けた事とか」

 

完全に敗北した気がした。彼に私の事で知らないことは無いのだ。今まで体に入っていた力が一気に抜けていくのがわかった。座り直しながら彼はこう言った。

 

「もう一度言おう。君には2つの選択肢がある。1つは今僕の目の前で死ぬこと。もう1つは僕の孤児院で働きながら住むことだ。

もちろん君が亡命した時点で君には一銭も残っていない。働くか、死ぬかだ。」

 

淡々と究極の二択を突きつける彼は楽しそうにもみえた。

 

「____書くわよ…」

 

生きていたい、早くこの異様な状況から抜け出したいと言う思いに突き動かされて

咄嗟に、契約書の内容を1つも見ずにサインしてしまった。

 

「ようこそ!僕の孤児院へ!

一緒に楽しく過ごしていこうじゃないか。

モニカ エルヴェシウス。

僕はジェラルド ゲイナーだ。よろしく」

 

契約書にサインした途端声の調子が上がった彼に狂気を感じた。