episode9
「おかえり。書斎の奥、あの部屋で話そう」
「ええ。そうね」
部屋に入ると以前と変わらない様子で壁じゅうに資料やメモが貼られていた。
「それで、真相はどうなのよ?」
「そうだな。結果から話すと、革命に誘導していったのは俺らや、アイツらの家の家臣だよ、
自作自演ってわけだ。」
「それで、細かく最初から話すと?」
「去年の2月だ、アンリの兄ちゃんがコネクションを作り出してから少し経った頃、変な薬が流通しだした。」
「あの、ゾンビ…、?」
「そうだー!よく分かってるじゃないか。
あれは中国からしか輸出されていないもので、特定に時間はかからなかったし、アイツが中国系と手を組んでるのはすぐ分かった。アイツらは儲けれるなら手段を選ばない。アンリの兄ちゃんはうまく利用されたってだけで、アイツは正直言って悪くない」
「じゃあ、
彼は死ぬ必要はなかったじゃない!」
「俺らは別に手にかけようとは思ってないさ、
操られてるのに気づかずに勝手に革命を起こしてアンリの家族やその他の貴族を断頭台に引きずり出したのも国民だ。」
「…。でも、国の治安は日に日に悪くなってる
崩壊も時間の問題だわ」
「さぁな。俺らは隣の国の治安なんて知らないし関係ない。__________「創造的破壊です」
「ヴィヴィ…」
「すいません。お話に割り込んでしまって。
お嬢様がおっしゃる通り、国の崩壊は目前。」
「ヴィヴィ…それでいいの…?」
「いいのです。アンリ様のお兄様の一件からアンリ様のご家族はマフィアとの関係を全て断ち切り、国を立て直す事をご決断されました。
マフィアと関係を断つ事はそう簡単な事ではありません。
アンリ様のご両親、そして、数少ない協力者であるモニカ様のご両親が集まり、
何度も何度も話し合われていました。
しかし、良い解決策は見つからず…。
新しい国をつくるには、
王族は一度国民の前で滅びる事で、全ての関係を絶つしかなかった。私達は国に戻れるか…」
「どうしてそれを早く伝えてくれなかったの…アンリを呼び出して…。はやく!!」
「できません!彼自身も貴方と同じ。両親を失った時、ここに来るまで全てを知らなかった
私達には何もできない」
「じゃあ…ここで、国が壊れていくのを黙って見ていろというの…?」
涙をこらえる為に目を閉じると頭の中で、家族と過ごした家や、弟と遊んだ庭、街の風景が走馬灯の様に流れた。
「誰も実行なんてしたくなかった!
でも、ご両親はあの国の未来を貴方やアンリ様に託した。あなた方がいつか、あの国に戻れるように、国民を導けるように。隣国のマフィアを頼ってまでお嬢様や、アンリ様を守られたんです。」
「そういう事だ。モニカ、」
「……。私。どうしたらいいか…」
_____身体に…に力が入らない。
膝から崩れ落ちながら
クリスマスの日が溢れる涙と共に蘇る。
とどまろうとした私の肩を強く押して
"貴方は生きるの" そう私に叫びながら
革命軍に捕らえられる母の腕を必死にひっぱった。喧騒の中、
"家を…燃やしてちょうだい。それが貴方のためなの。分かった…?分かってちょうだい。"
この言葉が私の耳に残る母の最期の言葉だった
言われた通り、私は家に火を放った。
「ごめんなさい…。全てを知っていたら、私は…家族を守れたかもしれないのに…」
しゃがみこむ私と同じ目線の高さになるように
ジェラルドは身体を折り曲げた。
「全てを知っていても、
何も変わらなかったさ。いいか。モニカ、
創造的破壊だ。新しい風を通すには古い壁をぶち壊さなくちゃならない。これはおまえの両親がおまえの為に選んだ最善だったんだ。
立て。こんな事でメソメソしてる時間はねーんだ」
「おい、ジェラルド!」
部屋に響くジャンの声に私達は顔を上げた。
「ああ。分かってる」
「ほら、な?俺らに時間はねーんだ」
「…どういうことよ。」
「ジャン。
全員この部屋に呼んできてくれないか」