episode10

「久しぶりだな。みんな」

 

続々と部屋に集まってくる。

 

「お嬢ちゃん、今朝ぶりだね」

 

リュウさん!…なんだかスーツを着ると雰囲気が変わるのね」

 

黒ずくめで部屋に入ってくる彼らはとても洗練されていたと同時に不気味なオーラをまとっていた。

 

「モニカ、君はここに座るといいよ。」

 

「先生。お久しぶりです。先生も、マフィアのメンバーなんですね…なんか、そういう風には見えないというか。複雑というか…」

 

「日頃は街の小さな診療所で普通に子供達なんかを診てるからね。マフィアだなんて思われないようにはしてるさ」

 

「そう…だったんですね。

そういえば、話って」

 

「君は聞いてるだけでいいさ。」

 

「…ええ。」

 

「さぁ、1番最後は誰かな」

 

ジェラルドが小さな声で呟いたのが私の耳に届いた。

 

「ごめんごめん。僕は日頃ここにいない身なんだから。急に呼び出すなんて、やめてくれよ」

 

「わかってるだろう?おまえが1番情報掴むのが早いくせに、1番最後にご登場とはね」

 

「ジェラルド。いいだろう?ギリギリまで情報を仕入れてから来たんだから」

 

「ああ。べつに怒ってはいないさ。

さっさと座れ」

 

全員が大きなテーブルを囲むように座ると、ジェラルドは口を開いた。

 

「わかってると思うが。

俺らは追われる身だ。あとは、シャルに説明を任せる」

 

「やぁ、みんな、お久しぶり_____「さっさと話せよ白髪」

 

「まぁまぁ、エルヴィス、話すから急かさないでくれ。」

 

「それでは本題に入ろう。彼がせっかちみたいだからね。革命から一年が経とうとしている。今、隣国の民主政治はうまくいっていない。むしろマフィアが裏で手を引いて政治はマフィアによって操られ、彼らに有利な法律が出来たりと、最悪だ。」

 

「それはみんな知ってることだろう?」

 

リュウさんはいつも通りの話し方でシャルルに言葉を投げかけた。緊張していた私は少し安堵した。

 

「話はここからさ。その後、あちら側の警察はマフィアに買収され、僕たちに麻薬売買の罪をなすりつけられ、僕らは隣の国の警察とこの国の警察、どちらにも追われてる。」

 

「…てことは。私たちの味方はいないってこと…?」

 

「そうだ。大正解。」

ジェラルドは焦るそぶりもせず私に向かって頷いた。ジャンニーノはその後すぐに話を切り出した。

 

「警察、そして機動隊、マフィア対策のエリート連中らを含めると、ざっと1000、俺らに逃げ道はないっぽいね」

 

「四面楚歌ってことか…」

 

彼らは落ち着いた口調で次々に口を開く。

 

「わかってるよな。おまえら」

 

ジェラルドの大きな声が部屋に響く。私の顔を指しながらかれは言った。

 

「こいつ、モニカ エルヴェシウスを死なせるな

これが俺たちの最後の仕事だ」

 

「やっぱ納得できねー。ジェラルド、おまえがあんなガキに執着する理由がどうしても分からねーし。邪魔でしかない」

 

エルヴィスは私を睨みながらそういった。

 

「特に理由はねーよ。金を積んでもらってるからさ。孤児院の金もあいつの家族がくれたんだ

仕事は最後まで全うするのが俺らのルールだ」

 

「…私はこの孤児院を守りたいです。皆さんは散り散りになって逃げてください。」

 

「モニカ、君も逃げるんだ。隠れ家があるから、そっちに僕やヴィヴィと一緒に。」

 

「そうですよ!あまりにも危険すぎます!」

 

アンリやヴィヴィは逃げようと口を揃えて言った。

 

「私は今まで守られ続けてきた。両親、ジェラルド、色んな人に。私はこの孤児院の子供達やここにある幸せを命を落としたとしても守りたい」

 

この一年の間に私の中でこの孤児院は私を癒し、小さな幸せを見出すことの出来る大事なとなっていたのだ。

 

「いいや。君も逃げるんだ。」

 

「どうして…!私は______「逃げるか、死ぬかだ。」

 

私はジェラルドに銃を突きつけられた。銃口はひんやりと冷たかった。

 

「今選べ。_____「私は____」

 

「おまえがここに来なければ、おまえの両親が俺らの所に来さえしなければ!俺らのファミリーはこの街で国がらみの陰謀になんか巻き込まれずに生きたいられたさ!命をかけてなんて軽々しく言いやがって、守れる力もないくせに」

 

言い返す言葉もなかった。彼らの一員になった気でいた私はその時無力さを自覚した。

 

「…ごめんなさい。」

 

銃口を下ろしてかれは耳元で呟いた。

 

「…もう少しだけ悪者でいさせてくれ。」

 

ジェラルドはイスにかけてあったジャケットを取り部屋を出ていってしまった。