episode11

「アンリ。ここは?」

 

私達3人は丘から少しまた登った所にある崖の上にある古びた古民家に来ていた。

 

「んー?ここは______「王家が代々引き継いでる亡命のための一時的なシェルターのようなものです。」

 

「そう。ヴィヴィはなんでも知っていたのね」

 

「…。生活に困らない程度の設備は古いながらに揃っております。騒動が収まるまでこちらに身を潜める事が可能でしょう」

 

「…ジェラルド」

 

ジェラルドがこれからどうやってこの状況を切り抜ける中が私の心にもやをかけた

 

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崖の上にある古民家からは小さくジェラルドのいる孤児院が見えるのだが、一向に動きはない

街はパトカーのサイレンと刑事らの怒号で騒がしさを極めた。

 

「おい!ヴィヴィ!!」

 

「誰だ。この声は…リュウリョウか…」

 

リュウリョウ様。」

 

玄関のドアを開けると先生が息を切らしながら立っていた。

 

「あいつ…!はぁ。ジェラルド!___「ジェラルドがなんて?」

 

「あいつ、やばい気がする。」

 

「なっ。何があったのですか。」

 

「俺とベルトに…!

孤児院の子供押し付けやがった」

 

「え!?彼はどこに…」

 

「わかんねー。他のやつからも色々連絡がきてよ。金やら武器やら偽造パスポートなんかまで

自分以外の全員の分用意して消えやがった」

 

「探しましょう…!」

 

「でもよ、モニカ、俺たちは動けねー。八方塞がりなんだ。今もし俺が下手に動いちゃ全員皆殺しちまう」

 

彼の行動はいつも突発的でわたしにはこれから何が起こるのか分からなかった。

 

「とりあえず、おまえらもあいつ見つけたら言っといてくれ、俺は子供の育て方なんて知らねーってよ」

 

「なるべく早く見つけるようにするわ」

 

その夜、私は再びあのクラブを訪れた。

 

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響く重低音は変わらず私の体を揺らした。

 

「いた。」

 

奥の部屋に向かっていくジェラルドを見つけた私は距離を取って動向を見守った。

 

「…ああ。偽装パスポートと家だ。

家が欲しい」

 

音に紛れながらジェラルドの声が聞こえる。

 

「ああ。分かってるさ。おまえらに全て任せる。王族は始末するさ。

俺が罪を被ったんだから、家くらいは報酬として貰わねーとな」

 

__________どうして。裏切ったの…

 

「…どうして。!!____「おまえ…!」

 

「誰だ」

 

「こいつは…!ああ。おれの…女だ」

 

「はぁ…何やってんだ?外で待っててくれって言っただろ?あとでかまってやるから、な?」

 

そう言って彼は私にキスをした。

 

「…!」

 

「はいはい。この金で遊んどきな、いい子にしてるんだぞ?…話はあとだ。」

 

「…もう!わかったわよ」

 

数分して、彼は私を店の外に連れ出した。

 

「おまえ。何やってんだ。バカ」

 

「あんたこそ何やってくれてるのよ。」

 

「うるせー。ガキは引っ込んどけよ。あああ!

おまえが来るから、話進まないし、首は突っ込むは、人の邪魔はするは散々だよ」

 

「…ごめん。」

 

「…いいって。とりあえずおまえも知ってるだろうけど、ファミリーにはこれから生きていけるくらいの金は用意したし、組織自体も警察にバレないように実質解散だ。だから、これでおまえと俺も関係なんてない。俺は隣の国で悠々自適に生活できる事が確約された。分かるか?おまえや王族がこれから死のうと消えようと俺には関係ない。」

 

いつもの落ち着いた話し方とは打って変わり

今日のジェラルドはいきり立っていた。

 

「さっきのはチャイニーズマフィアよね?!

あんなに…あんなに信頼してたのに」

 

「おまえが信じようと信じまいと俺は俺のしたい事をする。おまえがどう思っていようとも俺は悪人だ。」

 

失望した。こんな怖いジェラルドなんて見たくなかった。