episode5
夏になった。真夏のイタリアは雨の降ることのないカンカン照りが続いている。
私はあの日、部屋の壁に貼られていたあらゆる資料の記憶の断片を紙におこし、1人、真実を知るため調べ始めた。
孤児院を出て何処か部屋を探してこれからは
1人で生きていくつもりだ。
部屋を出て右手、階段を登ぼり、大きな廊下を突っ切るとあの部屋がある。ノックをせず、大きな音を立ててドアを開けた。
「私、ここを出ていく。ここからでて全てを自分の力で見つけるの。」
彼のデスクにまっすぐ向かいながら、少し震えた声で私はそう告げた。
「…そうか。」
彼は深く腰かけた椅子から立ち上がり、私の右手を取った。
「…なによ、」
「ん…。これ。付けとけ」
「なに。これ…」
「指輪だけど_______「なんで?」
「虫除けみたいなもんだよ。
…とにかく、付けとけ」
彼は私の人差し指に少しサイズの大きな指輪をはめた。
「あとは好きにしろ。」
「少しくらいは…世話になった。
ありがとう
さよなら。」
私は少ない荷物をまとめて孤児院を出た。
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孤児院を出た私は繁華街に来た。
日は随分と傾いていた。
私は一軒のクラブに入った。
多くのマフィアの溜まり場で、裏の情報が多く集まる場所だと聞く。
きらびやかなライト、大音量で流れる音楽でフロアが揺れる。
初めて踏み入れた世界は眩く輝いて、目が回った。正気を保つ為に、訳もわからず酒を口にする。フワッと身体が浮いた感覚に襲われる。
一気に熱っぽくなる。飲み慣れてない証拠だ
「…え? なんて、?」
声をかけられたものの、声が遠のいて聞こえない。強く手を引かれ、音楽もライトも少ないボックス席にひっぱられてしまった。
______なに…きこえない。。
揺れるような重低音が脳で共鳴して頭を揺らす
頭がいたい…。
「え…?情報…?」
_________あっ…殴られる…
全てがスローモーションに見えた。
「あの。情報は僕が持ってるから、その子、
離してくんないかな…?」
朦朧とする意識の中で、真っ白な髪が揺れるのを目がとらえた。
「さぁ。いくよ。肩かして。」
「んん…。」
「ごめん。あいつらに嘘ついた。走れる?」
「…え?」
「走って!!!!!」
酔いが回って、足がもつれながらも、私達2人は繁華街を抜け、知らない男達をまいたのだった。
「はぁ…はぁ____大丈夫?
怪我…してない…?」
「…す。すいません…。ほんとに…」
「警察呼ぶから…待ってて…」
「いやっ…!大丈夫です。1人で帰れます」
「帰る場所もないくせに…?」
「いま、なんて…?」
「はぁ…バカだなぁ。君も。指輪。わかる?
僕の手、見なよ」
「あっ…あいつの…。」
「そーだよ。物分かりは早いんだな」
彼は私と同じ指輪をはめていたのだ。
「どうして…わたしを。」
呆れたように笑う彼の姿は整い過ぎてみとれてしまいそうなほどだった。
「どうしてって。美人だったから…?
…と言うか、聞いてないわけ?
ファミリーはお互い助け合うんだよ。
死ぬ覚悟で。」
「私は。そんな仲間なんかじゃない」
「いいや。君もその指輪をはめてる時点で僕たちの仲間さ。だから助けてやった。ただそれだけ…。
それで…?帰る気はないんだろう?」
「…」
「警察を呼ぶから、そこで待ってて」
「いいの?!警察にバレても!!」
必死放った言葉を聞いた瞬間、彼は、
ニヤッと笑った。
「警察に、僕たちの仲間が居ないと思うかい?
やっぱり君はバカだ…」
遠くでサイレンの音が聞こえた。